あらゆる日常の一コマがアトリエ──相崎うたうの「どうして私が美術科に!?」──

🎄本記事はまんがタイムきらら Advent Calendar 2017 16日目の記事です🎄

【注意】本記事は「きららファンタジア」のネタバレも含んでいます。ご注意ください。

何度も発生する通信断にも、パケ死の危険にもめげずにも今日もきららファンタジア三昧。
このゲームの中に、あるモブの女の子が登場するが、キャラクターのデザイン担当はまんがタイムきららMAXで「夢見るプリマ・ガール!」を連載する昆布わかめ先生である。そういやどこかで見たような懐かしい絵柄は……と思ってはいたが、可愛いキャラだった。

きららファンタジアの公式Twitterがその昆布先生をフォローしていたが、実はきららファンタジアのスタッフ意外にも何人かフォローしている、きららの執筆陣の先生方がいる。
本記事で紹介する「どうして私が美術科に!?」の相崎うたう先生もフォローされている。
ということは桃音や黄奈子やすいにゃんのようなキャラが本編に登場して──

単行本1巻発売前後に、「どうして私が美術科に!? フォロー& RTキャンペーン」が行われ、対象のツイートをリツイートされた数によって描き下ろしツイッターアイコンから、単行本未収録の描き下ろし漫画の公開まで様々な特典が受けられる、最近のまんがタイムきららにしては珍しい取り組みで宣伝されていた。
実際、本作が連載されているまんがタイムきららMAXの中でも、「どうして私が美術科に!?」の掲載順位は良い。ただもうすぐ単行本2巻が出せる分の話数が溜まるので、連載継続になるのかどうか非常に気になるところである。

まんがタイムきらら公式Webでの、単行本1巻の紹介文はというと

願書の提出ミスにより、間違って美術科に入学してしまった酒井桃音。 当然のごとく居残り三昧な毎日ですが、仲間がいればそれでも楽しい!力を合わせて目指せ進級&卒業!きららの次世代を代表する、女の子の尊さがいっぱい詰まった初コミックスです。

素直になれないツンデレ娘のつみきさんと、史上最強の朴念仁の伊御さん。誰から見てもすごくイイカンジの二人だけど、まだまだ恋は始まらない!? 読めばゴロゴロすること間違いなし! 次世代ツンデレヒロイン登場の初コミックスです!

異識先生「あっちこっち」1巻の紹介文とよく似ている気がするが気にしないでおこう。

さて、きららの漫画はひだまりスケッチやGAなど美術が題材な作品は多いが、その中でも異彩を放つ本作の特徴は主に3つに分けられると思う。

1.あり得ない現実とそれを克服しようとする物語

普通科と間違えて美術科に入ってしまった酒井桃音。いつも課題をこなすために“美術X室”に居残る彼女、一緒に居残る他の仲間たちを交え、少し悲哀が入りながらもくすりと笑えるエピソードがテンポよく展開される。
本作の登場人物の名字は著名な日本画家から取っていると思われるが、桃音も含め他の仲間たちの絵もどこかセンスが独特、悪くいうと変である。
しかし色々とやり取りしていく中で、時には友情を育み、紆余曲折ありながら少しずつではあるが彼女達は何かが変わりつつあるように思える。何か、というと絵とかの美術センスではないと思うが……
その答えが明かされるのはもうすぐ、いやまだ先になると思う。

2.登場キャラクター間で繰り広げられる百合関係

桃音が最初に美術X室で出会った竹内黄奈子。どこかけだるそうで淡白ながら桃音をしっかり受け止め、だんだんと心を開いていく。黄奈子の生来の不器用もあいまって、他の漫画の百合とは異なり時にはすれ違ったり、喧嘩したりして決して順調な関係ではない。桃音も桃音でどうにもならなくなるとテンパる癖がある。
同じ美術X室の仲間である河鍋蒼と浦上紫苑の関係を見てみると、両方とも強烈な個性をもちながら時には寄り添い、やはりすれ違いを見せながらとりあえず騒がしくも上手くやっているといえる。

先のきららファンタジアの女の子の出る章は、やはりこの作品に蔓延する強烈な百合話がメインだと思ったが、本作に流れる百合はある意味現実的ともいえる、読んでいてえも言われぬ感覚にさせてくれる。
(多分単行本2巻に収録されるであろう)文化祭の回は必見。

3.ネタの力強さ

この作品が新規連載化したとき、このコマを見て只者ではないオーラを感じた。
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他の例を上げていくときりがないが、ただの美術漫画ではなく、随所に色々と強烈な個性を発揮している菱川翠玉(通称すいにゃん)、桃音ら1-7の担任である岡本玄恵(通称くろえ)先生、他にも色々と登場するキャラクターが逐一面白い行動をしている。桃音以外にもこうした魅力あるキャラを見ているだけでも本作は読むべきといえる。
普通に読み進めても強烈なコマやネタがいきなり登場するので油断ができない。

本作はまんがタイムきららMAXの2016年3月号から5月号までゲスト連載、同年6月号より連載開始されている。
この前後に連載が始まっている他の作品も面白いので、別な機会にまた取り上げてみたい。

あと、この黄奈子のセンスがとても好きである。Xで始まる言葉をチーム名にしようということで彼女が考えたのが……
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どうして私が美術科に!? 1巻 (まんがタイムKRコミックス) -
どうして私が美術科に!? 1巻 (まんがタイムKRコミックス) - 夢見るプリマ・ガール!  (1) (まんがタイムKRコミックス) -
夢見るプリマ・ガール! (1) (まんがタイムKRコミックス) -
posted by shaitama- at 21:48埼玉 ☔Comment(0)書籍

私はなぜ本気を出すのか?──宇城はやひろの「暁美ほむらは明日から頑張る!」──

🎄本記事はまんがタイムきらら Advent Calendar 2017 4日目の記事です🎄

暁美ほむらは明日から頑張る! (まんがタイムKRコミックス) -
暁美ほむらは明日から頑張る! (まんがタイムKRコミックス) -

2017年2月発売のvol.30をもって定期刊行が終了した、まんがタイムきららキャラットの増刊誌『まんがタイムきらら☆マギカ』。定期刊行終了とともに、連載されていたほとんどの作品は終了している。
しかし一部の作品は描き下ろし追加の上で続きが単行本化され、また『巴マミの平凡な日常』はまんがタイムきららフォワードに移籍している。

まどマギの知識も拙く文才の乏しい自分ではあるが、今回紹介したい作品は、去年記事を書かせて頂いた『みことの一手!』の作者である、宇城はやひろ先生の『暁美ほむらは明日から頑張る!』である。
本作はまんがタイムきらら☆マギカのvol.26から最後のvol.30まで掲載された連載分と描き下ろしを追加されて、単行本化されている。2017年4月27日発売。

シーシュポスの岩を思わせる、永遠に終わりの見えない目的に嫌気が差して──フッサールの言葉を借りるなら──“エポケー”(判断停止)してしまった暁美ほむら。しかしそれでも神話におけるシーシュポスと同じように、まどかを因果律の業から救わなければいけない!という使命感に抗えず、今日も(怠惰に加え不精なところが出てくる中で)ほむらは無駄な戦いを続けるのであった。
もちろんそこにはキュゥべえの思惑も絡んでいて──

何があっても生来の生真面目さは失うことができず、ひたすら現実と格闘するほむら。彼女の目的は達せられないまま、何度も時間軸が立ち現われては納得のいかない結果を迎え、ルーチンが繰り返される。ほむらは心の中の葛藤と疑問をカッコにしまいながらも、最終的にほむらが得た“現象学的還元”の結論とは。

続きがあればほむらの物語を読み続けていたいと思わせる、テンポよく面白さと哀しさの入り混じったストーリー。まどマギスピンオフ作品の中でも、本作をまず薦めたい。
そして私の好きな巴マミさんも終盤に見せ場があります。しかし格好いい見せ場があるかと思いきや、大事な時にいらんフラグ立てているのが相変わらずというか何というか

ところで、あとがきにも書いてある、宇城先生が考えていた「ほむらが時間遡行の力を活用してFXで大儲けを企む話」も見てみたかった気がする。でも有り金全部溶かしてこんな顔になりそう。

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あたしって、ほんとバカ
人のセリフ取るな by さやさや)

渡邊二郎著作集 5 フッサールと現象学 (渡邊二郎著作集(全12巻)) -
渡邊二郎著作集 5 フッサールと現象学 (渡邊二郎著作集(全12巻)) - 巴マミの平凡な日常 1-4巻セット -
巴マミの平凡な日常 1-4巻セット - みことの一手! (まんがタイムKRコミックス) -
みことの一手! (まんがタイムKRコミックス) -
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アタリ、アタリの……──宇城はやひろのみことの一手!──

🎄本記事はまんがタイムきらら Advent Calendar 2016 19日目の記事です🎄

まんがタイムきらら(フォワード除く)系列の作品は多種多様ある。三者三葉のように2003年からずっと連載を続け、コミックスが12巻(2016年12月現在)を突破している作品もあれば、きわめて短期で完結している作品も多い。
この作品も1巻できれいに完結しているが、いろいろな作品があるなかでぜひ手にとって頂きたい一冊である。

宇城はやひろ『みことの一手!』。まんがタイムきららMAXに2013年7月号から2015年2月号まで、断続的に掲載されていた。作者は現在まんがタイムきらら☆マギカ誌で『暁美ほむらは明日から頑張る!』を連載しているのでよろしかったらそちらもぜひ。

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「私の恋人は、囲碁だから………///」
(作中にもこの言葉はちゃんと出てきます)

わかりやすい帯の言葉である。囲碁を題材にした小説といえば川端康成の『名人』、漫画だったら『ヒカルの碁』などいろいろある。
この作品も囲碁愛に満ち溢れている、珠玉の逸品といえよう。

主人公の楠みことは、囲碁部に所属する高校生。素質はあり実力はあるのだが、何かが足りない。
容姿?私生活?言動?いや違う。では何が──?

いっぽう、幼馴染に鷺宮蛍というキャラクターがいる。きらら系の漫画にありがちだが、部長は主人公ではなく蛍のほうである。幼い頃はみことに負け続けだったが、自己研鑽を積み重ね腕を上げてきた。
さらに早河葵、白河文香という個性的な後輩たちもいる。

全1巻ということもあるが、あらすじをつらつらと書くとネタバレになってしまうので、何が描かれているか何が起きたかはここでは書かないが、言うなれば「雨垂れ石を穿つ」といえる(出典は『漢書』)。碁石とかけて言っているのもあるが、なぜその言葉なのか、それは本書を読んでぜひ思ってほしい。

ちなみに恥ずかしい話だが、自分は囲碁も将棋も打ったことがない。しかし臨場感あふれる舞台に接させてくれるという意味で、あたかも読者を本因坊戦の対局に引きずり込むような内容であることは過言は無い。

タイトルは適当に書いたわけではなく、みことの碁の打ち方を例えて言うならば、と真っ先に思いついた言葉である。え?お前碁を打ったことすらないだろって?すみません言ってみたかっただけなんです

みことの一手! (まんがタイムKRコミックス) -
みことの一手! (まんがタイムKRコミックス) -
posted by shaitama- at 23:10埼玉 ☔Comment(0)書籍